大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和34年(あ)1258号 決定

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人両名の弁護人山本茂雄の上告趣意について。

所論は原判決の憲法違反をいう点もあるがその実質は、要するに本件「坂田情報号外」なる文書は、選挙前一年以来引き続き発行している第三種郵便の認可ある旬刊新聞(公職選挙法一四八条三項参照)「坂田情報」の号外としてやはり新聞紙と認めるべきであるとする事実誤認ないし単なる法令違反の主張を出でないもので、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。しかも第一審及び原判決の説示によれば、本件「坂田情報号外」なる文書の印刷発行については右坂田情報の地方版の発行権限を有する坂田情報八代支局長杉田義光はもちろん、坂田情報の本社の経営者坂田大においても、なんら関知せず、被告人松岡仁が独断で名を右号外にかりて印刷し被告人魚住水哉と共謀して配布したものであること、配布先は坂田情報及びその地方版の講読者に対してではなく当該選挙区の一般民衆を対象としてなされたこと、配布の方法も常の郵送とは異なり、労務者を使って配布したものであること、坂田情報地方版は従来ガリ版であったが右号外は活版印刷でしかも無償配布されたこと、その内容が明らかに川村候補に当選を得しめる意図の下に地方住民に対して川村候補は中小企業及び農村代表として立つ政治家であり当選圏内に入るには今一歩という情勢であるから地方民は同候補のために挙って投票するようにという趣旨であること等を綜合して、本件「坂田情報号外」なる文書の新聞紙性を否定し、これを公職選挙法一四二条の選挙運動のために使用する法定外の文書の頒布に当るとしたこと及びこれを支持した原判決は正当であって、所論の違法は存在しない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例